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地下構造調査概説(歴史と現状)

■ 地下構造調査

当社は昭和58年の設立以来今日まで、石油天然ガス探鉱開発のための反射法地震探査データ取得による地下構造調査を基幹業務とし、関連技術の開発を重ねてきました。 石油天然ガスの主たる対象深度は1000m以深ですので、土木、建築目的の深度より深い地下を探る技術が必要です。当社はその技術を学術、環境防災目的の地下構造調査にも適用してきました。 近年、石油探鉱目的の三次元調査や環境防災、学術目的の深部地下構造探査が注目されています。 我が国において、深部構造調査を長年にわたり実施してきた唯一の民間企業として、当社の調査実績を中心にその歴史と現状について以下の順で紹介します。

(1) 海上調査

1. 調査実績

当社の親会社であり前身の石油資源開発(株)は昭和30年代から国内外の陸海域で調査を実施してきました。 当社は会社設立以来今日まで毎年海上調査を受注し実施しています。年代順に主な調査実績を列記します。

  1. 開洋丸による石油探鉱調査、国の基礎調査

    昭和51年に運航を開始した石油資源開発(株)の開洋丸は石油探鉱調査の専用船として稼動し、昭和58年からは当社が運航を受託し国と民間会社の多くの調査を実施しました。 また、昭和57年には南海トラフで海洋プレートの沈み込みを世界で初めて反射データで確認表現することに貢献しました。*1   昭和60年には開洋丸を用いた海上三次元調査を岩船沖で実施し、その成果は岩船沖油田開発に大きく寄与しました。*2   開洋丸は昭和62年まで稼動し、このような歴史的な成果を残しました。

  2. 白嶺丸による南極基礎地質調査

    金属鉱業事業団の白嶺丸を用いた南極石油天然ガス基礎調査に対し、昭和61年度より平成11年度まで石油公団に調査員を派遣しました。 また同船を用いた石油公団の沖縄海域等での基礎調査を受託し実施しました。

  3. 海外物探船の傭船による調査

    開洋丸の稼動終了以降は海外の物探船を傭船して国の基礎調査、石油会社の探鉱調査を受注し実施しました。

  4. 海陸同時観測による浅海調査

    測線を陸上から浅海部に延長し、両所で受発振する浅海調査を昭和62年から実施しています。 当初はエアガンやダイナマイトなどのインパルス型震源を用いた調査でしたが、平成10年にディジタル伝送の海底ケーブルの開発に成功し、バイブロサイス震源にも対応可能となりました。 当初は国の基礎調査(二次元調査)が主でしたが、近年は石油探査を目的とした三次元調査や、活断層調査等の環境防災を目的としたものが増えています。 その結果、陸域を含む浅海域で三次元データを取得することが可能になり、海域陸域のシームレスな地下構造抽出に貢献しています。

  5. 大陸棚画定調査

    海上保安庁による大陸棚延伸のための調査を物探船「大陸棚」を用いて平成16年から4年間実施しました。 海底地震計(OBS)を投入した屈折法データ取得解析も同時に実施しました。 その結果、反射屈折データの統合的解析により広範な海域での精密な地殻構造抽出が可能となりました。*3

2. 技術開発

当社は石油資源開発の時代から海上二次元、三次元調査法の研究開発をすすめ、昭和56年に実施された国内初の研究的三次元調査をはじめ多くの探鉱調査を実施しています。 また浅海用海底設置受振器ケーブル(OBC)の開発、ケーブル敷設船、エアガン船の導入、異種震源異種受振器記録の適切な統合処理等により浅海域での有効な調査が可能となっています。 また近年は、沿岸域では長大ケーブルを曳航した調査が難しくなりつつありますので、当社では対象海域の地形、水深等を考慮しエアガン船と小型ケーブル船を連動させた二船式調査法を確立しました。*4   事前の適切なデザイン、調査船の正確な誘導、発振受振の正確な管理等の課題を克服した結果であり平成19年に能登半島沖で実施して良好な結果を得ています。 将来も浅海域での石油探鉱、CCS調査等で有効な手段として期待されています。これらの技術開発は当社が永年実施してきた海上調査に従事し経験を積んだ技術陣にして初めて成し遂げ得たものです。

参考文献
  • *1 Aoki 他 「Detailed Structure of the Nankai Trough from Migrated Seismic Sections」 AAPG 1982
  • *2 佐藤 他 「会話型システムを用いた地震探査データ解釈」 石油技術協会誌 Vol.53 No1 1988
  • *3 笠原 他 「屈折法広角反射法による地殻構造解析の総合的手法」  最新の物理探査適用事例集 物理探査学会 平成20年
  • *4 佐藤 他 「二船式による2007年能登半島地震震源域の反射法地震探査」 地震研究所彙報 Vol.82 2007 

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(2) 陸上調査

元々石油探鉱のために発展した反射法地震探査は、地下構造の変化が少なく受発振の制約が少ない米国の陸域で開始され成果をあげてきました。 データのSNをあげるために重合法をはじめ多くの技術開発、工夫がなされてきました。 しかし当社が国内陸域で調査を実施するうえで、地質構造が複雑で、地表での受発振の制約が非常に多い状況は大きなハンディとなるものでした。 そこで当社は日本のような難地質難地形に対応するための非爆薬震源の研究、探鉱機器の研究開発を継続してきました。 その結果開発したGDAPSシリーズ(探鉱機、浅海用OBC、クロコダイル型極浅海用OBC)は、現在に到るまで当社の陸上海上用機器の主力となり、国内のみならず海外での過酷な条件にも耐えて使用されています。 近年は都市部をはじめとしてそれ以外でもケーブルの設置に対しては障害が多く、また保安上の観点からも長大ケーブルの敷設が困難になりつつあります。 そこで当社は長大ケーブル展開を必要としない独立型レコーダーを開発して単独で使用、もしくはケーブル展開方式と併置して使用しています。

1. 調査実績
  1. 国内石油探鉱調査

    親会社である石油資源開発(株)の探鉱開発のための調査、石油公団の基礎調査、国内石油開発会社の調査等を受注し実施してきました。 最近は北海道勇払地域、新潟県北蒲原地域で三次元調査を実施しました。平成21年7月現在では新潟県の片貝地域で三次元調査を実施しています。

  2. 海外石油探鉱調査

    石油公団からの受注により中国タリム盆地、蘇南地域、カザフスタン等で大規模な調査を実施しました。 当社が開発したGDAPS探鉱機が揚子江下流域、ユーラシア大陸中央部の砂漠、草原部で活躍しました。

  3. 環境防災・学術調査

    和歌山の中央構造線の地下断面が明らかになった例*1 、また上記(1)海上調査で記載したように海洋プレートの沈み込みを明瞭に捉えた例等をきっかけとして学術調査に反射法データが多用されるようになりました。 さらに、平成7年の阪神淡路地震の後、陸域を中心とした構造調査や活断層調査等が多く計画、実施されました。 近年の中越沖での地震や原子力発電所の耐震指針改定に伴い、原子力発電所周辺において、陸域だけでなく海陸境界域や海上で数多くの深部構造調査が実施されました。当社もそれらの一部を受注して実施しました。  一方、平成14年より開始された東京大学、京都大学等による「大都市大震災軽減化特別プロジェクト」では関東周辺直下*2 、近畿地方直下*3  のプレートの形状を把握することに成功しました。 これらの調査には前述した当社のGDAPS探鉱機と独立型レコーダー、受振システムとしてはOBCが大きく貢献しました。現在は新潟地域で海陸同時観測による「ひずみ集中帯観測プロジェクト」が進行中です。

参考文献
  • *1 吉川 他 「反射法地震探査による和歌山県西部の中央構造線の地質構造」 地質学論集 第40号 1992
  • *2 H. Sato 他 「 Earthquake source fault beneath the Tokyo」  Science, 309, 5735, 462--464, 2005
  • *3 Kiyoshi Ito 他 「Deep Seismic Surveys in the Kinki District:Shingu-Maizuru Line」 地震研究所彙報 Vol.82 2007

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(3) 三次元調査

地表面に震源と受振器を直線的に配置して記録を取得し(二次元)断面図上で地下構造を表現する二次元調査は、その断面上ではある程度真実に近い構造を表現できますが、断面からはずれた場所の情報は一切表現できません。 従ってデータが無い場所の構造解釈は信頼性に欠け、その結果必然的に主観が混入します。 震源と受振器を直線的配置から平面的配置に変えた三次元調査では、地下の三次元的構造が表現できますので客観的な評価が可能です。 三次元調査が広く実施されるようになったのは、単に次元が2から3に変わっただけではなく、データが三方向で同じサンプリング間隔が確保され、三次元での表示が可能となり地下構造のイメージングを行う際の最も強力な道具となったからです。*1 更に解釈支援ツールを使用することによりデータの特性を連続的に追跡することが可能となりました。例えば三次元的にデータの相関性を算出するコヒーレンス解析を利用すれば通常のデータからは読み取れない断層、チャネル等の抽出が可能となりました。

1. 三次元調査の歩み

70年代前半に調査法が提唱され、米国のGSI社が先鞭をつけ1975年に実際のデータが最初に取得されました。 その後80年代後半からの油価低迷により石油会社は発見リスクの大きい地域での探鉱開発には躊躇し、既存油ガス田の見直しにより収益を上げることを重視しました。 一方90年代には大量のデータ処理が可能なハードウェア、ソフトウェアの開発がなされました。 その結果、石油会社は広い有望エリアをもつメキシコ湾と北海で複数の受振器ケーブルの曳航による大規模な三次元調査を実施し試掘の成功率を大きく上げました。 一方陸上での三次元調査はデータ取得条件が海上より厳しいので汎用化が少し後れました。 80年代には狭い地域(数平方km程度の'Postage Stamp Survey'と称された)での適用が主でしたが、90年代にはいりその効果が認識されるに伴い米国を中心に多くの調査が実施されました。 例えば石油会社で先導的に三次元調査を推進してきたSHELLグループは探鉱成功例としては85年にナイジェリアの湿地帯で初めて三次元調査を費用28mm$で実施し400mmbbl(つまりバーレルあたり7セント)の埋蔵量増加を確認し、 また技術開発の例としてはオマーンの陸上鉱区でバイブロサイスの発振周波数を工夫することにより大きな能率向上を獲得しました。 また、最近では北海を中心に三次元調査を繰り返し実施することにより油ガスの生産状況を把握して油田管理に役立てる試みもなされるようになりました。 それには曳航型に加えて、より高品質なデータの取得が可能な海底設置型の受振器ケーブルも使用されています。
国内では大型三次元物探船が2008年国により導入され三陸沖地域、小笠原地域等で調査が実施されています。

2. 当社の取り組み

三次元調査の技術開発要素として以下の4点があがられます。

  • 1 ) 複数のケーブル、震源による統合的観測
  • 2 ) ナビゲーションデータのリアルタイム処理及び地震探査データの船上基本処理
  • 3 ) 真の三次元深度構造の抽出
  • 4 ) ハード、ソフトの支援ツールによるデータ解析と解釈

れらは一般的には90年代から実用化がなされ技術の汎用化に寄与しました。 海上調査では船の位置はもちろん曳航するケーブルの位置情報及び現時点で地下情報がどの程度カバーできているかをリアルタイムに把握する必要があります。 また大量のデータを扱うことからデータ処理にはハードとソフトの統合的な開発が不可欠です。またデータの解析解釈では支援ツールにより位置データ、坑井データを含め瞬時に解析する必要があります。 当社は80年代前半からこれらの技術開発を開始し*2  東海沖での研究的な調査を手始めに油田地帯でもデータを取得しました。 これらのデータはデータ処理を経て、国内で初めて導入されたワークステーション搭載の支援ツールにより解釈されました。 当社は90年代には探鉱機開発を進め、これを使用した海外での大規模な陸上二次元調査を実施し、国内では比較的小規模の三次元調査を浅海、陸上で実施しました。 浅海ではOBCの開発導入により将来の調査需要の喚起に期待がもたれました。2000年代にはいり岩船沖、三陸沖、沖縄などで海外の三次元船を傭船した調査が実施され、当社からは技術員を派遣しました。 浅海域と陸上では当社の人員と機材を使って大規模な三次元調査が複数年度にわたり実施されました。 特に浅海域では陸域とともに連続したデータが取得可能となっています。海外の三次元データ処理も受注し、その結果に対して極めて高い評価を得ました。 調査域として最大で600平方キロの三次元データ処理の実績があり、現状のシステムで1000平方キロ程度までは対応可能となっています。
特に三次元調査は単独の機材を操作するような単一的な作業ではなく、必須な技術の開発が測地学、地質学等を含む形で進められてきましたので、 当社は現場調査のプランニング、航測部門、計測部門、データ処理解析部門等の複合された技術体系として実績と経験を重ね、 現在はどのような状況でも陸域海域を問わずデータ取得から解釈作業まで実施できる態勢を整えています。

参考文献
  • *1 内田 「三次元調査の現況と意義について」 天然ガス Vol.41 No.9 pp2-9 1998
  • *2 青木 他 「三次元反射地震探査システムとデータ処理」 物理探鉱 Vol.37、No.5、pp-27-41 1984

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(4) データ処理解析

1. 地震探査データ処理及び関連技術の開発

60年代にデジタルデータの取得が石油探鉱のために導入されて以来、CDP重合法、各種フィルター処理を通して高品質な成果が得られるようになりました。 更に70年代のBright Spot処理を手始めにマイグレーション処理、AVO処理、PSDM処理等が開発され汎用化されてきました。 同時にこれらは震源、受振器の変遷、二次元、三次元調査法の変遷と計算機能力の飛躍的発展と連動したものです。 その結果、当初は地下構造として反射面の形状をおぼろげに抽出してきた段階から、信頼性のある地下構造による地層中の油ガスの胚胎状況、地表下数10kmのプレートの形状までの把握が可能となってきました。
また石油の探鉱には地震探査による構造の推定のみならず、石油がどのように生成しどのように集積して油田が形成されたかを推定することが重要です。 そのため地震探査データ、特に三次元データと坑井データを統合した解析が行われています。同時に衛星画像データの解析により関連情報が取得されています。

2. 当社の取り組み
  1. 地震探査データ処理解析

    当社グループでは70年代初頭からデジタルデータ処理ソフトウェアの自社開発を進め、 地震探査データの基本処理、坑井データの基本処理のためのソフトウェアを完成させ現在に到るまで改良を重ねつつ実用に供しました。 最近ではフリーソフトも出回っていますが、それとは違い当社開発のソフトは時代の要請、顧客の要求に柔軟に対応できるのが特徴です。 しかもパラレル計算機による三次元データの特殊処理から研修用や現場での簡易QC処理用のPC版バージョンまで用途に応じたタイプを保有しています。 これらを用いて、国内難地域、大水深海域、海外の大規模地質構造、油ガス田等のデータ処理解析を積み重ねてきました。

  2. 地質解析

    当社は石油・天然ガスの生成・移動・集積といった油ガス田が成立する一連の過程を解析するツールを開発しノウハウの蓄積を重ねてきました。 根源岩からいつどれくらいの石油・天然ガスが生成・排出したかを推定するツールであるBSS-PC、 石油根源岩のポテンシャルを測定するロックエバル分析の結果を利用して初生的な根源岩能力を推定するツールであるIVTSST、 炭化水素の散逸を妨げるシール(帽岩)のシール能力を評価するツールであるSEACAP等を開発し、世界各地での石油探鉱の一助として多くの実績を重ねています。

  3. リモートセンシングデータ解析

    当社は衛星画像データによる地質構造等の解釈に昭和50年前後から取り組み、元々基本的なソフトは自社で開発し世界各地で数多くの解析を実施してきました。 最近では地表変位の抽出による解析で画期的な成果を得、またインド洋等での海洋汚染のモニタリングなどに成果をあげてきました。下記技術情報に多くの解析事例を掲載しています。

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