2050年
カーボンニュートラル社会の
実現に向けた貢献

CCS・CCUS関連分野

二酸化炭素地中貯留(CCS:CO2 Capture & Storage)では、排出源から分離・回収・輸送されたCO2を、貯留層と呼ばれる地下1000m以深の空隙の多い地層に超臨界状態で圧入します。貯留層は、その上位を遮蔽層と呼ばれる緻密な地層に覆われて、長期間に亙り、CO2を漏洩させないことが必要となります。CCSを実施するためには、物理探査を用いて、十分な性能を有する貯留層と遮蔽層のパッケージ(ストレージ)を見出すとともに、圧入されたCO2の時空間挙動を監視して、CO2が当初の計画通り貯留層内に留まっていることを確認する必要があります。当社は、数多くの探査サービスを通じて培った三次元地下構造の可視化技術を用いて、CCSに適したストレージを見出す「貯留適地調査」及び地層に圧入されたCO2の挙動を監視する「モニタリング」において、我が国のCCS事業を強力にサポートします。

【海底下CCSプロジェクト模式図】

貯留適地調査においては、まず反射法地震探査データを取得・処理して、地下構造の解釈や岩石物性の解析を行い、貯留層や遮蔽層の性状を評価します。次に、得られた情報から貯留層モデルを構築し、CO2圧入挙動予測シミュレーションを実施して圧入可能量を見積もるとともに、環境への影響やCO2漏洩等のリスクを検討します。当社は、これら一連の評価・検討作業を、ワンストップのサービスとしてご提供します。

モニタリングにおいては、圧入前・圧入中・圧入後の長期に亙って、貯留評価及びリスク評価の両側面から、地震探査を主体とした物理探査、坑内での各種測定、人工衛星を用いた地表変動計測及び環境モニタリングが実施されます。その中でも、弾性波を用いた「繰り返し物理探査」は、地層中に圧入されたCO2の時空間挙動を監視する上で、非常に有用な手法です。当社は、貯留サイトごとに、コスト評価を含めた最適な総合モニタリングシステムを設計・構築し、システム運用・維持管理に至るサービスを、パッケージとしてご提供します。

モニタリング仕様設計における対象及び測定項目

出典:苫小牧におけるCCS大規模実証試験
30万トン圧入時点報告書 (「総括報告書」) 
【転載許諾済み】
https://jgi-inc.com/wp/wp-content/uploads/2023/01/report202005_full.pdf

再現性指標を用いた、繰り返し地震探査における変化の評価

PRED:Predictability
データ間の時間シフトや極性反転を考慮しない、波形の相似性のみを表す指標。
NRMS:Normalized RMS
データサンプルごとの差異を振幅で正規化した指標。時間シフトを含む、全ての差異を反映する。

CO2圧入・貯留に伴う地盤隆起と地盤沈下の例(アルジェリアIn Salah CO2圧入プロジェクト)

地熱資源開発分野

地下深部の割れ目に形成される地熱貯留層・断裂系の予測が地熱開発の成否の鍵となります。 断裂系をより確実に捕捉するため、当社は① DAS-VSP ② AE 探査 ③ 地表弾性波探査 を組み合わせた、三位一体の統合弾性波探査を提案します。

A E:Acoustic Emission
DAS:Distributed Acoustic Sensing
VSP:Vertical Seismic Profiling

DAS-VSP

DAS-VSP は地上の震源と坑井内の多数の観測点を用いて行う VSP 調査において、分布型光ファイバーセンシング技術の一つであるDASを採用した新しい調査法です。
坑井内に密度の高い受振測線を設定できるため、3次元的な反射法調査やトモグラフィ調査を効率的に実施できるようになりました。
さらに、当社では、データに含まれる回折波を利用した、新たな断裂系の調査法も開発・実用化しており、DAS-VSP は画期的な地熱貯留層探査法として、今後の活用が期待されます。

(寺西ほか,2021,物理探査学会第144回学術講演会)

AE記録からの回折波抽出・強調の例 (左)坑井近傍で発生したAcoustic Emission(AE)のDAS記録(右)平面波抑制・回折波強調処理後の記録 

さらに詳しく

AE 探査

地熱地域における群発地震や、坑井作業に伴う地下の圧力状態の変化に伴い生じたAE分布から、き裂の分布状況の理解が進む場合があります。当社は資源探査用の小型機材を利用し、 既存の観測網に追加して行う稠密臨時観測を提案します。稠密な観測網は精度の高い震源分布の推定や、破壊の様式の把握に必要な震源メカニズム解析の高精度化に寄与すると考えられます。

地表弾性波探査

山間部の地熱地域での地表弾性波探査は、厳しい地表条件の克服が課題となります。林道や登山道を利用した測線設定が可能である場合、三次元トモグラフィ解析、準三次元反射法記録を用いた断裂系評価アトリビュート解析を通して、断裂系の把握が飛躍的に進展すると考えられます。

(図1:青木ほか,2018,物理探査学会第139回学術講演会に加筆)
(図2:持永ほか,2018,日本地熱学会平成30年学術講演会)

図1:地熱地域での三次元トモグラフィ解析の例
反射法断面上にトモグラフィ解析による速度分布を透過表示。トモグラフィ解析結果には中~長周期の構造変化が捉えられており、地熱兆候地における高速度異常や現在の熱水上昇域における低速度異常などが認められました。

図2:断裂系評価アトリビュートと比抵抗記録の比較
三次元反射法記録に対し Curvature やFault Likelihood(断層尤度)などの断裂系評価アトリビュート解析を適用することで、き裂の発達状況が可視化されます。本図はこれらアトリビュート記録を、 比抵抗検層解析より推定された孔隙率ログや、既往MT調査の比抵抗分布図(NEDO, 1985)と比較しています。

洋上風力発電開発分野

洋上風力発電は、再生可能エネルギーとして大きな注目を集めています。風車の基礎設計においては、海底の地盤リスクを適切に把握し評価する技術が重要となります。 特に、断層、軟弱層、シャローガスなどの地質リスクを抽出し、支持層、基盤層と対比される地質層序や地層分布を空間的に高精度に可視化することが求められています。

当社は、二次元・三次元の高分解能探査を中心として、既存文献調査から海底地盤モデル構築、リスク評価までワンストップな地盤調査サービスを提供し、洋上風力発電の普及に貢献します。

【海底地盤モデル構築ワークフロー】
【沿岸海域における工学的基盤面(Vs400m/s層)の把握例】

当社は、海底下における地盤モデルの作成に関して、二次元・三次元高分解能音波探査と並行して海底に地震計を一時的に設置することにより、 ショートストリーマーの調査では得られない深部P波速度、S波速度、工学的基盤面(Vs400m/s層)の分布を推定することを提案しています。