
複数のストリーマケーブルを曳航する三次元音波探査により地下構造の三次元的可視化が可能です。高分解能三次元音波探査では高い周波数の音源(小型エアガン、BoomerまたはSparkerなど)を使用し、高密度なデータを取得することにより、地層の堆積状況・岩盤の形状・断層や浅層ガスなどの分布を調査します。
二次元音波探査と比較して、三次元音波探査を用いて作成される三次元地質モデルは、地質情報の精度が各段に向上するため、複雑な地質構造にも対応できます。三次元音波探査は、構造物基礎の設計・施工に資する地盤調査だけでなく、海底ケーブルのルート調査にも利用できます。特に、ボーリングデータ等との統合解釈により支持層や工学的基盤の凹凸、横ずれ断層を含む活断層、軟弱地盤やガス層の存否を高い精度で確認することができ、海域での地質リスク評価、ジオハザードの回避に有効です。
沿岸域における海底地形・地質特徴および地質リスク
欧州(北海/バルト海) | 日本 | 海底地質リスク例 |
安定的大陸地塊 ・均質で平坦な構造 ・氷河地形、氷食谷 (glacio-tectonics, tunnel valleys, iceberg scouring) ・広い大陸棚 | 活動的変動帯 ・多数の断層、変動地形 ・不均質な地質構造 ・地震活動に伴う現象 ・狭い大陸棚、急峻な地形 | ✓ 活断層 ✓ シャローガス、異常高圧層 ✓ 旧河道、埋没谷、軟弱層 ✓ 地すべり地形 ✓ 液状化層(浅部の砂層) ✓ ダイアピル、泥火山 |
<調査事例1>
熊本県八代海で得られた音波探査の結果を三次元的に可視化したものです。過去の河川の流れた跡と思われる旧河道(チャネル)構造が確認できます。
(猪野ほか, 2018, 物理探査学会第137回学術講演会に加筆)

【八代海の沖積層基底付近の堆積層中のスライス】
<調査事例2>
大分県別府湾では、高分解能三次元音波探査を実施し、詳細な地下構造情報が得られました。下図は、三次元のデータセットから南北方向および東西方向の反射断面を切り取ったものです。白黒のスライスは、断層の位置が明瞭になるように地層の不連続を強調する処理(Seismic similarity attribute)を加えています。

【別府湾での高分解能三次元音波探査の結果図】
高分解能三次元音波探査の結果から、海底下の活断層、旧河道(下左図)、地すべり跡(下中図)、軟弱地盤などの地質リスクを面的に調べることが可能となり、対象海域における地質リスクを総合的に可視化することができます。二次元音波探査ではこれらの小規模な分布を見逃してしまう可能性があります。また、高分解能三次元音波探査データに対してAVO解析を行うことで、浅部に潜在するシャロ―ガス胚胎層の空間分布を推定することができます(下右図)。この図では沖積層基底の下におけるガス胚胎の可能性がある領域を赤色で表示しています。
このように、沿岸海域における地質リスクを総合的に評価し、スクリーニングすることで、洋上風力発電プロジェクトをはじめとする海洋開発における地質リスクを事前に把握し、回避することに貢献できます。


沖積基底付近の深度スライス
(海底下40.5mのSeismic similarity)

沖積層の層厚と断層比高

シャローガスの潜在リスク領域
(沖積基底直下付近のスライス)