震探データ処理・
解析サービス

基本データ処理

フィールドで取得された反射法地震探査のデータは、適切な手順で処理することにより、地下の構造や物性を解釈することが可能な処理済みデータとなります。データ処理で用いられる手法や手順は、調査の対象た地質構造、そして記録に含まれるノイズの種類や強度を考慮のうえで設計されます。反射法地震探査で用いられる、最も基本的な処理の手順を以下に示します。

【処理フロー概要】
【現場記録】

ノイズ抑制処理

反射法地震探査のデータには、地表付近の環境や地下構造に由来する様々なノイズが含まれています。これらのノイズを低減して、地層境界面からの反射波を強調するためにノイズ抑制処理を行う必要があります。ノイズ抑制の例としてよく用いられる手法を以下に紹介します。

■ Data-Adaptive Time Variant Filter (DATVF)

細分した時間ゲート毎に特定の周波数範囲での平均振幅を計算し、指定した閾値を超えるゲートに対して振幅のスケーリングを行います。時間的・空間的に局在し、反射波とは異なる周波数帯域を有するノイズを抑制することができます。

【発震記録例】
【DATVF適用後】
          

■ Trace Edit in Frequency-Space Domain (F-X Edit)

周波数領域における振幅の比較により不良トレースを検出し、空間ゲート内の正常なデータを用いて不良箇所を予測・復元します。波浪ノイズや交通ノイズなど、空間的に局在するノイズの抑制に用いられます。

【発震記録】
【F-X Edit適用後】
【抑制されたノイズ成分】
          

2. 振幅補償

地下の深部で反射して戻ってきた反射波は、振幅が減衰していることから、これを回復するような振幅補償を適用します。

          

3. デコンボリューション

現場で取得される弾性波は、震源の波形やデータ収録システムの特性など様々な要因により変形を受けており、そのままの波形では地下のイメージを正しく表現できないため、一つの反射面に一つの孤立した反射波が対応するシャープなパルス状の波形に変換します。

【振幅補償とデコンボリューションの適用】
          

4. 静補正

陸域のデータ取得の場合、ごく浅い風化層の弾性波速度の違いや標高の変化が反射波の到達時間に影響を与えることから、これを補正します。 当社では、風化層の直下を伝わる屈折波の到達時間から補正量を計算する手法のほか、グリッド化された速度構造を推定して補正量を見積もるトモグラフィ法を用いて補正量を計算します。

          

5. CMPソート

フィールドで収録されたデータを、発震点と受振点の中点を共有する(Common Mid-Point)データごとに並べ替えることにより、地下の同じ点で反射したとみなせるデータごとの集合(CMP gather)を作ります。

          

6. 速度解析

CMPソート後のデータを用いて弾性波が地層中を伝播する速度を解析し、その結果をNMO補正やマイグレーションなど後段の処理に使用します。さらに、得られた速度情報は、岩石や流体の種類を推定するためにも用いられます。当社は自社開発をはじめとする複数の解析ソフトを活用し、精度の高い速度情報を効率的に解析します。

【速度解析画像の例】
          

7. NMO (Normal Move Out) 補正

速度解析で得られた速度モデルを用い、離れた発振点と受振点の組み合わせで収録されたデータを、仮想的に同じ点で発振・受振したデータに変換することにより、収録された反射データの時間の遅れを補正し、同一反射データが同じ時刻に到達したように補正します。

【NMO補正の適用】
          

8. 重合

地下の同じ場所から反射したとみなすことができる数十から数百のデータを足し合わせ、1つのデータにすることで、不要な波を抑制し、有用な反射波だけを強調した反射断面データ(重合記録断面)を作成します。

【重合記録断面図】
          

9. マイグレーション

データの配列は現場の発震点-受振点の配置に即しているため、直ちに地下の構造を示すものにはなっていません。反射波を適切にマッピングし、地下構造として認識できる形にするためには、イメージングと呼ばれる処理が必要です。地層傾斜が存在すれば、反射する点は鉛直下方とはならないことから、反射波を正しい位置に移動する処理(マイグレーション)を行い、実際の反射点位置を反映した断面イメージを作成します。

【マイグレーション断面図】

基本処理では以上の工程を経て、最終的な反射地震断面が作成されます。 また、さらに精度が高く、かつ効果的に雑音(ノイズ)を低減し反射波を強調する処理手法の開発が継続的に行われており、より信号-雑音比(SN比)の高い断面イメージの作成が可能になっています。当社は、自社開発ソフトと外部ソフトウエアの組み合わせにより、SN比の高い断面イメージをご提供します。

三次元データ処理

三次元地震探査のデータ処理は、その基本的な工程や内容において二次元データ処理と大きく異なることはありませんが、各工程で三次元データに対応した手法が用いられます。また、扱うデータの量が大きくなるため、 規模の大きな計算システム(数千個のCPU、ペタバイト規模のHDDなど)が必要になります。三次元であることの利点が発揮される処理内容として、以下の二項目を挙げることができます。

ノイズ抑制処理

信号とノイズは、ともに地層中を三次元的(四方八方)に伝わりますが、その伝わり方が異なります。ノイズの抑制処理では、この伝わり方の違いが利用されます。 データを二次元的に収録するよりも、三次元的に収録した方が信号とノイズの違いが明瞭になり、両者を容易に分離できる、つまりノイズを効果的に抑制できるようになります。

【浅海域で取得された3Dデータに対するノイズ抑制処理の例
(左)ノイズ抑制処理なし、(中)二次元ノイズ抑制処理、(右)三次元ノイズ抑制処理】

イメージング(マイグレーション)処理

地層境界面から来て地表の受振器で記録される反射波は、必ずしも受振器の真下からくるものばかりではありません。地震探査で捉えられた反射波を、空間的に正しい位置に移動させる、 イメージングまたはマイグレーションと呼ばれる処理が必須となります。その際、地下のある地点を正しく表現するためには、その地点を取り囲む多くのデータを用いて、 三次元的な波の伝わり方を考慮したマイグレーション処理を行うことにより、正確な地下のイメージを得ることができます。

(Teranishi, et al, 2021)

モデル化した断層面と地層図

(澤田ほか, 2020, 三次元地質技術解析コンソーシアム
第3回技術セミナー)

蛇行河川システムの堆積相分布様式を参考に、弾性波探査データに見られる反射波の特性に基づいて、砂岩・細粒砂岩・泥岩の分布をモデル化した例

特殊データ処理

基本データ処理に加えて、さらに反射波を鮮明にしたり、より細緻な地下構造を可視化するための特殊な処理手法が利用可能になっています。

マルチディップ対応型CRS処理(MDRS処理)

基本データ処理では不鮮明であった記録にマルチディップ型CRS(Multi-Dip Reflection Surface; MDRS)処理を行うことにより、 雑音に覆われた微弱な信号が選択的に強調されて、地震探査断面の品質が飛躍的に向上します。

【火山岩地帯における適用例。通常のデータ処理断面(左)とMDRS処理断面(右)】

全波形インバージョン(FWI)

地層中の弾性波速度は、岩石や流体の性状を反映する地下情報であると同時に、精度の高いデータ処理のために欠かせないパラメータでもあります。 全波形インバージョン(Full-waveform Inversion; FWI)を用いることにより、従来の手法では推定が難しかった複雑な速度構造を、精度よく捉えることが可能になります。

【FWIによる速度構造の復元(モデル計算の例)】

まず走時トモグラフィで推定された速度構造(2)を初期モデルとして波動場モデリングを行い、結果を観測データと比較します。次に両者の差が小さくなるようにモデルを更新し、再度波動場モデリングと比較します。観測データとモデリング結果の差が十分に小さくなるまでこの操作を繰り返し、FWI結果(3)を生成します。

【地震探査断面上にFWIで得られた速度分布をカラーで重ねて表示した例】
【坑井位置における音波検層速度とFWI結果の比較。FWIに用いる最小周波数による違い】

走時トモグラフィの結果(緑)を初期モデルとしてFWIを実施した結果(赤)、FWIの入力データが低周波数成分を含むほど坑井記録(青)の傾向に近づくことがわかる。

高密度速度解析

通常のデータ処理で行われる速度解析では、測線上で数百メートルから数キロメートル毎に設けられた解析点において、解析者が速度スペクトル等のデータを目で読み取ります。これに対し、高密度速度解析は、全てのデータ位置においてコンピューターが自動的に速度を読み取ります。高密度速度解析を実施することで、深度方向および側方に変化する詳細な速度構造を抽出することが可能となり、地層を構成する岩種や孔隙流体の違いを推定するための情報が得られるようになります。

【(上)通常の速度解析、(下)高密度速度解析】

物性解析サービス

音響インピーダンス・インバージョン

P波速度と密度の積である音響インピーダンスは、地層を構成する岩石の孔隙率や岩相、そして孔隙を満たす流体の種類などを推定するための重要な情報です。音響インピーダンス・インバージョンは、反射法地震探査データと坑井データから音響インピーダンス構造を再構築する解析手法です。当社では、モデルベースの手法(model-based inversion)や統計的手法(stochastic inversion)など、複数の手法によるインバージョン解析のサービスをご提供しています。

AVO(Amplitude Versus Offset)解析

地層境界面における反射係数の入射角依存性(Amplitude Versus Offset)を詳細に評価するAVO解析により、上下の地層を構成する岩石の性状を推定することができます。例えば、様々な原因で生じる強振幅から、ガス層に由来するものを識別する際などに用いられます。AVO解析の結果は地下の状況と一意に結びつくものではないことから、結果の評価には、予め複数の地質シナリオに基づいて実施されたAVOモデリングを参照する必要があります。当社では、地震探査データのプレコンディショニングからAVOモデリング、そしてAVO解析までの一貫した解析サービスをご提供します。

重合前インバージョン(AVOインバージョン)

重合前インバージョンはAVOインバージョンとも呼ばれ、AVO解析と同様に反射係数の入射角依存性に基づいて地下の音響(P波)およびS波インピーダンス構造を推定する解析手法です。AVO解析が、地層境界面におけるインピーダンスのコントラストを抽出するのに対し、AVOインバージョンは地層自体のインピーダンス構造を明らかにします。当社では、波動理論や岩石物理学に精通した経験豊富な技術者が、信頼性の高いAVOインバージョンを実施しています。

多種物理探査データ統合解析を通じた三次元地下構造モデルの構築

三次元反射法地震探査データ、坑井(検層)データおよびノンサイスミックデータ(重力探査・MT・電磁・磁気探査)などの多種物理探査データを用いた統合解析を通じて、三次元構造・物性・力学特性に関わる地下構造モデルを構築します。当社は、こうした岩相・流体性状・孔隙率・力学パラメータに関わるモデル構築によって、天然ガス・石油の探鉱事業・開発計画などを支援しています。

【岩相・物性モデル構築ワークフローの例】