株式会社 地球科学総合研究所

最新の技術サービス リモートセンシング技術サービス 事例

グローバル地表観測変位解析サービス ICON

2020年メキシコ南東部オアハカ州で発生した
地震のリモートセンシングによる
衛星SAR差分干渉処理結果(速報)

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グローバル地表観測変位解析サービス ICON

2020年メキシコ南東部オアハカ州で発生した
地震のリモートセンシングによる
衛星SAR差分干渉処理結果(速報)


2020年メキシコ南東部オアハカ州で発生した地震(2020年6月23日15:29 UTC発生;M7.4)の前 後に観測された,ヨーロッパの衛星Sentinel-1のCバンドSARデータを用いた差分干渉処理の結果です。

図1 図2

2020年メキシコ南東部オアハカ州で発生した地震の地表変位 差分処理結果データ画像01

変位発生領域の東側を観測した2020年6月19日と2019年6月25日の観測データ,および,西 側を観測した2020年6月12日と2020年6月24日の観測データについて処理を行い,2つの結果を 合わせて表示しています。上図は差分インターフェログラムの位相表示であり,震央を赤色の○により 示しています。また,USGSより取得したMMI値(Modified Mercalli Intensity;地震による揺れ の強さの指標)のコンタラインを重ねています。Sentinel-1のSARはCバンド(波長=5.6cm)の データであり,1サイクルの位相変化は,衛星の視線方向における半波長=2.8cmの地表変位に相 当します。位相の増加は距離が長くなる(=衛星から遠ざかる)ことを意味します。下図は,位相変 化量を鉛直方向の変位量に変換したものです(水平方向の変位が無いと仮定しています)。 位相変化のパターンから,隆起が発生していると考えられます。その変位量は最大で90cmになると推 定されます。今回の地震に伴い形成された地表面の隆起量分布は西北西-東南東方向に伸長した 楕円形の形状をしており、400㎞×250㎞程度の範囲に広がっているものと推定されます。一方、地 震の震源は地表で隆起が観測された領域の端部付近の深度20~30㎞に位置していると推定されて います※1。震源の位置および地表における隆起量分布域の位置および形状を考慮すると、今回の 地震においては、震源で発生した岩盤の変位に端を発し、隆起域全体を持ち上げるような西北西- 東南東方向の走向を持つ逆断層性の断層が活動した可能性を示唆しているものと考えられます。な お,本処理結果は速報扱いであり,水蒸気遅延等は未補正の状態です。

※1:USGS,NTWC,PTWCなどの公表値